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明日から使えるファシリテーションメモ 第3回

Wednesday, December 4, 2013 0 コメント
3. ロジカルでエレガントな「収束」を.

前回はアイディアを可能な限りだすための「発散」の方法についてお話しました.
今回は,「発散」して出てきたアイディアを構造化して整理する「収束」の方法を紹介します.

絞り出された沢山のアイディアは,「発散」直後にはただ無秩序にならんでいます.
このままでは複雑すぎて把握が困難で議論がすすまず,「合意形成」にたどり着きません.
そこでアイディアの「ブロック化」と「体系化」を行います.
「ブロック化」とは同じようなアイディアを束ねることです.
「体系化」は束ねられたアイディアを秩序があるように並べることです.
この「ブロック化」と「体系化」を合わせて「構造化」と言います.
「構造化」して整理することで,参加者の理解を促進するのです.

ここで指導医講習会でも使われているKJ法を思い出してください.
(忘れてしまった方は -> http://www.tfu.ac.jp/liaison/edu/navi_PDF/navi06-04.pdf)
KJ法においては,カードにアイディアを書いていき(「発散」),それらの中で同じような内容なものをまとめてグループをつくります.
その後,グループ同士の関連を考察して図示化していきます.
まさにそれぞれが「ブロック化」と「体系化」です.

さて,これら (1)「ブロック化」と (2)「体系化」のスキルに関してもう少し説明します.

(1)「ブロック化」
同様の内容をもつアイディアをまとめるために「ブロック化」をおこなうのですが,どういった状況でどの様にブロック化をするか…イメージが難しいですよね.
でも実は私たちは「ブロック化」を日常的に実臨床内でおこなっています.

例えば,ICU内で患者さんの問題点を列挙してそれらを論じる時に,「臓器別分類 (by system)」を用いて「ブロック化」をおこなっています.
他にも,今日すべき治療・管理をすべて挙げたあと「職種別分類」というブロック化をおこない,それぞれの専門職に対して仕事の割り振りをしています.
鑑別診断であれば「VINDICATE!!! + P」などの分類方法も用いていますね.
他にも「血小板減少の鑑別診断」もそうですね.「産生低下」「消費亢進」「貯蔵量増加」に分けられます.

会議などででてくるアイディアも上手に「ブロック化」しましょう.
そしてそれらにラベルをつけるとよりわかりやすくなります.

(2)「体系化」
「ブロック化」されたもの同士がどのように絡んでいるかをわかりやすくするために「体系化」を行います.
言葉で言うとわかりにくいですが,絵で見たら理解しやすいと思います.
みなさんプレゼンテーションソフトのPowerpointをつかったことがありますよね.
そのなかにSmartArtという機能があるのを知っていますか?
それがまさに「体系化」のためのツールなのです.
横並びならばリストにできますし,順序・順列があるならプロセスを示せます.他にも色々あります.
ぜひ一度SmartArtをじっくり眺めて,どうしたら「体系化」が上手に行くかを考えて見てください.
その後,「体系化」したものをどうやったらみんなに伝わるかを実践してみましょう.
絵をかいてもいいし,口で説明してもかまいません.
状況に応じて対応できるようにしていきましょう.


さて,いかがでしたか?
もちろん,絶対に「発散」->「収束」という順番であるということはありません.
先に構造を示してから「発散」をしていくということもします.
いずれにしても,「発散」と「収束」を意識すると意見が出やすく,理解が進み,参加者同士の共有するものが多くなると思います.
他にも「収束」をする際に行うことがあるのですが,それはまたの機会に.
次回は「合意形成」についてお話します.

明日から使えるファシリテーションメモ 第2回

Wednesday, October 30, 2013 0 コメント
2. 効果的な「発散」の促し
「発散」のフェーズで意識しなければいけないことは,「合意形成」のために必要なアイディアはこのフェーズですべて出し切らなくてはいけない,ということです.
このタイミングででなかったアイディアは,この後どこにも出てくることができません.
参加者は,「発散」しきるんだ,アイディアを出し切きるんだという思いでこのフェーズに望まなければなりません.
ここでファシリテーターが上手く立ち回ることで,「発散」が適切に,そしてスムーズに行われます.
「発散」を促す際に有用なスキルを,a) 受け止める,b) 引き出す,という2つに絞って紹介していきます.

a) 受け止める
参加者から意見がでたら,その意見を能動的に「受け止める」ことをします.
「受け止める」ことにより意見を出す行為が肯定され,その後もアイディアが出やすくなります.
「受け止める」ためのスキルとしては以下の2つが良く用いられます.

・「復唱」
ファシリテーターが参加者のアイディアをただ繰り返すだけでも「受け止める」ことになります.
 A「散歩をするというのはどうでしょうか」
 F「散歩ですね」
もっと言えば,発言の末語だけ復唱するのでもかまいません.
 A「家族にもっと介入してもらえればと思います」
 F「そう思うのですね」

・「言い換える」
同じことをファシリテーター自身の言葉で置き換えても共感を伝えることになります.
 A「昨夜から尿量が低下していたのですが,補液したら改善したので,水分が必要だったんだと考えます」
 F「要するに,脱水だったと考えているということですね」

b) 引き出す
上手に質問することで,参加者から意見を絞り出しましょう.
2つのスキルを紹介します.

・「セミオープン・クエスチョン」
限定しないで意見を広く聞きたい時に有用な質問方法は「オープン・クエスチョン」ですが,あまりにオープンだと出てくるアイディアにまとまりがなさすぎて,論点が見えなくなったり混乱を引き起こしたりします.
そのため,ある程度答えの範囲を絞るように促す「セミオープン・クエスチョン」が有効です.
 オープン「この方の呼吸状態に関して,なにかご意見ありますか?」
 セミ・オープン「この方の換気不全に関して,なにかご意見ありますか?」
オープン,セミオープン,クローズドの3タイプの質問を上手に組み合わせて,意見を吸い上げてください.

・「横の質問」「縦の質問」
一つのアイディアが出た後に続けて質問する時に,「横の質問」を使うか「縦の質問」を使うかを意識すると,より上手にアイディアが引き出せます.
アイディアを拡散させる「横の質問」は,一つのテーマに対して他の意見がないか,別の視点で考えられないかを促す質問です.
 F「他に肺塞栓症を診断するのに有用な検査はありますか?」
 F「発熱の原因を感染ではないと考えた場合,どういう疾患が考えられますか?」
議論を掘り下げる「縦の質問」は,前に出た意見の根拠や原因,または続く道筋などを引き出す質問です.
 F「なぜそう考えるのですか?」
 F「その治療を行うと,結果的に何が起こりますか?」

いかがでしたか?
今回は「発散」のフェーズで有用なスキルとして,受け止める,引き出すという2点に絞って紹介いたしました.
他にもいくつも有用なスキルやフレーズがあります.興味があれば,フレーズ集などを読んでみてください.新たな発見があるかもしれません.

明日から使えるファシリテーションメモ 第1回

Monday, September 30, 2013 0 コメント
当院救急部メーリングリストで短期連載している「明日から使えるファシリテーションメモ」です.

第1回.「発散」から「収束」を経て「合意形成」に.
当集中治療部において何らかの医療行為を行う際には,可能な限り多い人数で話し合い,そこでその医療行為が妥当だと判断されなければなりません.
妥当と判断されるというのは,すなわち「合意形成」がなされるということです.
ということは,話し合いは「合意形成の手段」ということになります.
話し合って「合意形成」を行った後に,医療行為を実施することが許されるのです.

さて,話し合いの中で合意形成を得るためには,その話し合いが上手く行われる必要があります.
話し合いの道筋(プロセス)には色んな型(パターン)があります.話し合いの内容に合わたパターンの選択が,上手い話し合いには欠かせません.
当集中治療部の議論に最も有用なプロセスは「発散・収束」型プロセスです.
このプロセスでは,「発散」と「収束」というフェーズを経て,最終的に「合意形成」に至ります.
まず参加者全員で可能な限りアイディアを出し(発散),その後にそれらを上手にまとめて(収束),そしてみんなが納得できるものを作り上げる(合意形成),という順番で話し合いをおこないます.

ここで集中治療部の回診を思い出してください.
回診では診断・治療のいずれの話題においても,この「発散」->「収束」->「合意形成」を行っているということに気付きませんか?

「この患者はショック状態である」
->「その原因として考えられるのは…と,…と,…」(発散)
->「これらの原因は4つの群に分けられる.…と…はxxに,…と…はooに分類される.」(収束)
->「ショックの原因を考えるために,***という検査をしよう」(合意形成)

治療の議論をしているときも同様ですね.

大切なことは,「発散」のフェーズで「収束」させない,「収束」のフェーズで「発散」させない,ということです.

というわけで,今後議論をする際に,いま発散のフェーズなのか,収束のフェーズなのかを考えて発言すると,より有機的に話し合いが行えると思います.

回診以外でこの「発散・収束」型プロセスが有用なのは,アイディア創造を必要とするときだそうです.
KJ法なんかは,まさにこの「発散・収束」型プロセスですよね.

今後の「明日から使えるファシリテーションメモ」では,発散の方法,収束の方法,合意形成の方法などを少し紹介していく予定です.

10年

Thursday, August 22, 2013 0 コメント

医者になって早10年.
今からちょうど10年前に偉大な救急医から言われたことを思い出す.
「10年間は自分の勉強ために時間を使え.11年目からは社会のために時間を使え」
今,この言葉が私に重くのしかかる.

…少しずつではあるが,できることをやっていこう.

見学

Tuesday, March 12, 2013 0 コメント
今日は京都医療センターの救命救急センターから見学に来ていただきました。
どうやって上手に組織を運営していくか…みんな悩みは同じですね。
良いアイディアをみんなで共有していけたらなぁと思います。
別府先生と田中先生、当直明けでお疲れのところご苦労さまでした。
CEの井上さんも含め、今後ともよろしくお願いいたします。

カロリンスカ研修終了

Saturday, February 9, 2013 0 コメント

1ヶ月のカロリンスカでの研修を終え、仕事に復帰しました。
仕事をほっぽり出して行ったため、皆様には多大な迷惑をおかけしました。

ECMOはさることながら、チームビルド、教育システム、モチベーション管理、他部署との関係構築、搬送システム、移植医療、終末期医療など、多くの事を学ぶ良い機会となりました。
そして、自分が提供できる"よい医療"とはなんだ?患者と患者家族の幸せってなんだ?医療従事者の幸せって何だ?ということについて、より深く考えることができました。

丁寧に時間を割いて色々な事を教えてくださったカロリンスカのスタッフの皆様には本当に感謝いたします。