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明日から使えるファシリテーションメモ 第2回

Wednesday, October 30, 2013 0 コメント
2. 効果的な「発散」の促し
「発散」のフェーズで意識しなければいけないことは,「合意形成」のために必要なアイディアはこのフェーズですべて出し切らなくてはいけない,ということです.
このタイミングででなかったアイディアは,この後どこにも出てくることができません.
参加者は,「発散」しきるんだ,アイディアを出し切きるんだという思いでこのフェーズに望まなければなりません.
ここでファシリテーターが上手く立ち回ることで,「発散」が適切に,そしてスムーズに行われます.
「発散」を促す際に有用なスキルを,a) 受け止める,b) 引き出す,という2つに絞って紹介していきます.

a) 受け止める
参加者から意見がでたら,その意見を能動的に「受け止める」ことをします.
「受け止める」ことにより意見を出す行為が肯定され,その後もアイディアが出やすくなります.
「受け止める」ためのスキルとしては以下の2つが良く用いられます.

・「復唱」
ファシリテーターが参加者のアイディアをただ繰り返すだけでも「受け止める」ことになります.
 A「散歩をするというのはどうでしょうか」
 F「散歩ですね」
もっと言えば,発言の末語だけ復唱するのでもかまいません.
 A「家族にもっと介入してもらえればと思います」
 F「そう思うのですね」

・「言い換える」
同じことをファシリテーター自身の言葉で置き換えても共感を伝えることになります.
 A「昨夜から尿量が低下していたのですが,補液したら改善したので,水分が必要だったんだと考えます」
 F「要するに,脱水だったと考えているということですね」

b) 引き出す
上手に質問することで,参加者から意見を絞り出しましょう.
2つのスキルを紹介します.

・「セミオープン・クエスチョン」
限定しないで意見を広く聞きたい時に有用な質問方法は「オープン・クエスチョン」ですが,あまりにオープンだと出てくるアイディアにまとまりがなさすぎて,論点が見えなくなったり混乱を引き起こしたりします.
そのため,ある程度答えの範囲を絞るように促す「セミオープン・クエスチョン」が有効です.
 オープン「この方の呼吸状態に関して,なにかご意見ありますか?」
 セミ・オープン「この方の換気不全に関して,なにかご意見ありますか?」
オープン,セミオープン,クローズドの3タイプの質問を上手に組み合わせて,意見を吸い上げてください.

・「横の質問」「縦の質問」
一つのアイディアが出た後に続けて質問する時に,「横の質問」を使うか「縦の質問」を使うかを意識すると,より上手にアイディアが引き出せます.
アイディアを拡散させる「横の質問」は,一つのテーマに対して他の意見がないか,別の視点で考えられないかを促す質問です.
 F「他に肺塞栓症を診断するのに有用な検査はありますか?」
 F「発熱の原因を感染ではないと考えた場合,どういう疾患が考えられますか?」
議論を掘り下げる「縦の質問」は,前に出た意見の根拠や原因,または続く道筋などを引き出す質問です.
 F「なぜそう考えるのですか?」
 F「その治療を行うと,結果的に何が起こりますか?」

いかがでしたか?
今回は「発散」のフェーズで有用なスキルとして,受け止める,引き出すという2点に絞って紹介いたしました.
他にもいくつも有用なスキルやフレーズがあります.興味があれば,フレーズ集などを読んでみてください.新たな発見があるかもしれません.